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ストーカーに追い回された二年間の話

1:名も無き被検体774号+:2012/11/28(水) 22:20:19.46 ID:BGEwHJpC0
当時高校2年生、天国と地獄をいっぺんに味わった話です


2:名も無き被検体774号+:2012/11/28(水) 22:22:20.94 ID:CvyWKVjX0
高2で既にストーカーされたのか
人格破壊だな


4:名も無き被検体774号+:2012/11/28(水) 22:33:07.98 ID:BGEwHJpC0
事の起こりは高校一年生の秋の文化祭

当時音楽部というピアノ弾いたりカスタネット鳴らしたりの音楽なら何でもい部活に所属しており
文化祭の出し物で音楽室を借り演奏を披露することになっていた

司会進行を任され、30分ほどのステージが終わると、帰っていく観客の中一人こちらに近づいてくる人が

当時高3の演劇部部長、吉田先輩だった
そのときが完全な初対面だったが、いきなり手を取って「演劇部に入って!!」と声高に叫んでいるので
演劇部ってこんな人ばっかなのかと納得したのが印象に残っている


7:名も無き被検体774号+:2012/11/28(水) 22:38:53.16 ID:e+10wYmx0
>>4
演奏してて演劇部にスカウトされたのか

どんなパフォーマンスしてたんだよ


5:名も無き被検体774号+:2012/11/28(水) 22:36:21.71 ID:x3KNtYNY0
つづけろください


9:名も無き被検体774号+:2012/11/28(水) 22:43:01.15 ID:BGEwHJpC0
「声がいい、その声ならすぐに主役をやれる」と声をべた褒めされた

初対面に声のことを触れられるのは、吉田先輩が初ではない
むしろ毎回毎回、このヘリウムに喉を侵されたみたいな地声について初対面の人は何かしら感想を言ってくる

「声優目指せば?」「声可愛いね」「変わった声だねー」などなど、肯定的なものもあれば
「無理して声作ってんじゃねーよwww」といったごもっともな意見も度々あった

声のことで何か言われるのはうんざり、声が勝負の演劇部に入るなんてマジ勘弁
吉田先輩には申し訳ないが即お断りしようと思っていたものの、「体験入部だけでも!」と食い下がられ
高校3年生なんて高1から見れば神のような先輩を邪険に扱うこともできず、翌日演劇部へと向かった


6:名も無き被検体774号+:2012/11/28(水) 22:38:51.83 ID:O3oItEKz0
>>1は女?男?


10:名も無き被検体774号+:2012/11/28(水) 22:50:13.53 ID:BGEwHJpC0
>>6
女です

今だから言えるがスカウトされた演劇部に行きたかったのは声がコンプレックスだったからだけではない
奇人変人が集まることでそりゃもう悪名高い演劇部様だったのだ

声が四六時中大きく他人との距離が近い吉田部長はもちろんのこと
常に何らかの人格を演じている演技性人格障害のような先輩
斬新なデザインのメガネにマッシュルームヘアのガチオタ先輩など
近づくだけで火傷しそうな良く言えばユニークな面々だった

実際部室は隔離されているかのように現在使用されていない倒壊寸前の旧館
そこの3階は全て演劇部のフロアらしく、噂では聞いたことがあるが実際に見るのはその日が初めてだった


12:名も無き被検体774号+:2012/11/28(水) 22:57:47.52 ID:BGEwHJpC0
旧館に入った時点で上の階から奇声が聞こえてきた
階段を上るごとに「この先演劇部でござ候」「キミも早く来ちゃいなYO」といった、随分昔から張られているらしい
寒い張り紙が目に入る

3階に足を踏み入れると何故か廊下に面した窓にカラーテープが張り巡らされていた
いくつも並んだ部屋の中から声の聞こえる教室へ足を踏み入れると、中にいたのは4人

発声練習の声が止まり、皆がいっせいにこちらを向いた


そこからは大歓迎の嵐
「新入部員キターーー!!」「喋って!?喋ってみ!?」と辺りを取り囲まれ、延々とちやほやが続いた

部室を見渡すと割れた窓にガムテープ、床も剥れて粉々、なぜか隅に古びたダブルベッド
早々に帰りたくなった


11:名も無き被検体774号+:2012/11/28(水) 22:51:59.66 ID:bWGBnzKy0
誰の声っぽい?TARAKO?


13:名も無き被検体774号+:2012/11/28(水) 23:06:35.29 ID:BGEwHJpC0
>>11
方向性は釘宮さんに近いそうですが厳密に言うとそこまでこの声に似ている人はいないらしいです

そこで、吉か凶か運命の出会いを遂げる
個性豊かな面々の中に唯一混じっていた至ってプレーンな感じの人物、近藤だ

近藤は同じく1年生、狂気に満ちた演劇部に単身乗り込んだ度胸ある女子高生
人当たりのいい笑顔と先輩の無茶振りにも柔軟に対応できるノリの良さで
演劇部のマスコット的な先輩方の愛されキャラだった

正直近藤がいなければ演劇部には入部しなかっただろう
近藤が一緒に頑張ろうと手を引いてくれたお陰で、試しにここで頑張ってみようと思えるようになったのだ

しかし数ヵ月後近藤との関係が最悪になるとはまだ誰も知る由もない


14:名も無き被検体774号+:2012/11/28(水) 23:14:33.85 ID:e+10wYmx0
・・・ん? レズ?


15:名も無き被検体774号+:2012/11/28(水) 23:15:48.44 ID:BGEwHJpC0
数日後、正式に入部届けを提出し、晴れて演劇部員として拍手で迎えられた

当時大会を約1ヶ月後に控えており、その練習で部活は大慌て
「客観的な意見がほしい」とまずは観客役を頼まれ、もらった台本に目を通しつつ
部員達の演技をはじめて見た

理解に時間のかかる演劇だった
よくわからない新興宗教、前衛芸術といった感じがした

部員達が舞台上に散らばり、それぞれ別の方向をむいて直立不動のまま
同時に同じ言葉を詠唱するシーンなど、なんか危ないところに来てしまったんじゃないかと思わず震えた

しかしこれが演劇の世界では高評価らしく、大会でも評判は上々らしい
演技性人格障害疑惑の谷口先輩が毎回の脚本を書いているそうだ


17:名も無き被検体774号+:2012/11/28(水) 23:23:15.96 ID:BGEwHJpC0
先輩達は、チョイ役ながらも出演枠を作ってくれた
正直この中に混ざれる気がしなかったが、二つ三つの台詞を舞台の外から言うだけだ

スポットライトを浴びながら身体で演技をしなくていいぶん、素人にも多少気が楽だった

翌日から猛練習が始まった

高校演劇界で名高い我が高演劇部の名を貶めるような結果は許されない
近藤に演技指導をしてもらいながら、何度も何度も同じ台詞を叫び続けた

先輩達も合間に差し入れのカルピスを持って指導に来てくれた
荒ぶる神のように、それでいて無垢な動物のようにと谷口先輩はよく分からないことを口走っていたが
なんとか意向に沿えるよう努力した


18:名も無き被検体774号+:2012/11/28(水) 23:29:46.77 ID:BGEwHJpC0
ヒントを言うとストーカーになる人物はまだ登場していません



本番がやってきた
初めて訪れる他市の大きな市民ホール、自分達の番が近づくと控え室へ向かい
衣装に着替えたり最後に台本に目を通したり、各自ピリピリしながらもそれぞれのことに集中していた

先輩達は慣れた様子、近藤でさえ出演に関する勝手は分かっているようで
後ろを付いていくうちにすぐステージ裏に着いた

前の出場校の演技が終わり、幕が下りるとすぐさま大道具の設置
といってもこちらは机や椅子くらいなので部員全員でかかればすぐに終わった

いよいよステージ中心に吉田部長がスタンバイし、アナウンスとブザーの後幕が上がっていく


20:名も無き被検体774号+:2012/11/28(水) 23:36:08.53 ID:BGEwHJpC0
部室で見るよりもさらに堂々とした表情で体つきで、感情を込めながら長台詞を難なくこなしていく
先ほどまで舞台袖にいた近藤もこちらを一度見たあとステージへ飛び出して行き
ついに一人残されてしまった

あとは自分の番まで劇が進むのを待つばかり
まだ来るな、まだ来るなと思いながらも早く終わらせてしまいたいと興奮と緊張はピークに達していた

そしていよいよ台詞が回ってきた

冬場なのに汗をかき、手で胸を押さえながら精一杯言ってのけた
終わると同時に、会場に起こる小さなどよめき

全開の公演までいなかったヘリウムアニメ声の部員が舞台袖から突然台詞を言ったのだから
そりゃ「何事だ!?」となるだろうが、何かやらかしてしまったのかと当時は気が気じゃなかった


21:名も無き被検体774号+:2012/11/28(水) 23:43:42.39 ID:BGEwHJpC0

あれよあれよと言う間に舞台は終わり、拍手喝采のまま幕が降りた
片づけを男子部員に任せ吉田部長と近藤は真っ先にこちらに駆けつけ
最高だったとじっとり汗が染みた衣装のまま抱きついてきた

一気に不安が晴れ、舞台袖ながらも観客の惜しみない拍手を浴び
先輩達との一体感に感動した

大会終了後、部員一行がホールの外へ出ると、他校の生徒が吉田部長をあっという間に囲んだ
宝塚の男役のような部長には女性ファンがかなり多いらしい
吉田部長に握手を求め、部長が応えると感動して叫び声を上げる生徒もいる

その中の一人から、途中のあの声は誰ですかと質問が上がった
部長は迷わずこちらに手を向けた
「声いいですね!」「ファンになりました!」と人ごみの中から聞こえた

悪い気がしなかった


22:名も無き被検体774号+:2012/11/28(水) 23:52:11.75 ID:BGEwHJpC0
そうして、二年生の春になった
部長達は卒業し、近藤との活動がメインになった

台本は既成のものが中心となり、近藤は主役を務めた
先輩から受け継いできた部の名を守るため、近藤はいっそう熱心に練習に取り組んだ

こちらは、回を重ねるにつれファンが増えた
近藤と話している声を聞いて「○○役の人ですか!大ファンです!」と握手を求めにやってくる生徒もいた
ファンは皆、近藤とは握手せず満足して去っていった


他校の生徒が多い中、一般の方のファンがいた
二十代の女性だった
声の話だけではなく、全体的な演技までしっかりと見て感想をくれる人だった

この人だけは、近藤にも握手を求めた


24:名も無き被検体774号+:2012/11/28(水) 23:57:41.07 ID:BGEwHJpC0
このときから、近藤との関係に影が落ちはじめていた

近藤の演技は、どれだけ頑張ってもこの声で台無しにされた
ファンは皆声にしか注目せず、感想もこの声のことばかりだった

近藤が怒りを覚えるのも当然だった
心から申し訳ないと思った

日に日に、近藤の態度が硬くなっていった
もう学校で会っても挨拶はしてくれず、こちらが声をかけても知らん振りで通り過ぎて行った
1年生の頃は一緒に寄ったアイス屋も、もうしばらく行っていなかった

演技の練習が心底辛いと感じた


25:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 00:02:28.85 ID:oPPZqCxl0
ほうほう


26:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 00:03:40.54 ID:1SnkUISo0
嫉妬はこわいですね~


27:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 00:05:10.41 ID:BGEwHJpC0
重い気分で次の大会を迎えた
演技をしているとき、一番前の正面の席にいつも感想をくれる女性が座っていた

大会終了後、近藤は早々と帰ってしまった
一人市民会館のエントランスに立っていると、あの女性がまた声をかけてきてくれた

このとき初めて名前を知った
長田さんというらしい

もう一人の子はいないのと聞いてきたので、用事があって先に帰りましたとウソをついた
それならせっかくなので座って話そうとエントランスの休憩用の椅子を勧められた

近藤がいないぶん、長田さんは延々と喋り続けた
近藤の演技を随分褒めていたし、こちらの演技に駄目だしもあった
どの指摘も的を得ていて有難かった

長田さんは昔役者を志したことがあると語っていた


28:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 00:10:20.15 ID:zBgFotU40
近藤との関係が悪化し、演技について相談できる相手がいない中
長田さんの的確なアドバイスは大きな支えになった

その後他校の生徒や観客がいなくなるまで、演技のことや全く関係ない日常生活のことを話した
長田さんは聞き上手で、こちらが喋りやすいよう質問を投げかけてくれた

「彼氏はいたことある?」「男の人ってどう思う?」
おかしなところに突っ込むもんだと思っていたが、これもガールズトークかと考えれば特に違和感はなかった

どちらからともなく、メアド交換を提案した
「演技で困ったことがあったら遠慮なくメールしてね」と頼もしく言ってくれた

長田さんのお陰で、次の大会までの練習も頑張ろうと奮い立った


29:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 00:11:12.70 ID:oPPZqCxl0
ここまではいい人っぽいな


30:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 00:18:53.13 ID:zBgFotU40
練習では、近藤の機嫌を常に伺い、バカバカしい話を面白おかしく話した
近藤が見せる笑顔のため、延々と接待のような練習が続いた

大会が近づくと、長田さんからメールが届いた
また大会終了後に会いたい、もう一人の子は大丈夫?という内容だった
大丈夫ですと返信した

大会当日、やはり近藤は一人で先に帰った
他校の人々に挨拶をしたあと、待ってくれている長田さんの下へ走った
近くのお店に行こうと誘われた

席について、長田さんは近藤のことを聞いてきた
「あの子とあまりうまく行ってないんじゃない?」
まさに図星だった

もてはやされすぎた結果近藤との間に生まれた亀裂のことを、長田さんはなんとなく推測していたらしい


34:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 16:25:21.49 ID:zBgFotU4
近藤のことを初めて長田さんに相談した

近藤の努力がこの声のせいで報われないのが申し訳ない
だけどありがたくもこの声を好きだといってくれる人がたくさんいる
大会のたびにいろいろな人に声をかけてもらえるのが嬉しかったが、今は近藤のことが気になって気が重い
近藤との関係は辛いがなんとか元の仲に戻りたい、演劇も続けたい

支離滅裂だったが長田さんは最後まで聞いてくれ、「そういうのよくあるよ」と言ってくれた
長田さんも昔演劇をやっていた頃こんな経験があったのかと思うと仲間意識が芽生えた

しかしこの翌週、立ち直ることの出来ないある出来事が起きる


35:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 16:31:42.69 ID:zBgFotU40
大会では、観客が出場校の感想をアンケート用紙に書くのが恒例だった
そこで高校ごとにまとめられたアンケートは実際に見せて貰えるので
その感想や意見を次に生かすことが出来る

我が演劇部あてのアンケートの内容は、ほぼこの声のことで埋まっていた
劇の内容に関するものがちらほらあっても、近藤個人への感想はひとつもなかった

その回のアンケート結果を見るのもやはり気が重かった
近藤がどんな気持ちでアンケートを読んでいるのかを考えると同じ空間にいるのも辛かった

例のごとくアンケートを顧問から受け取り、近藤が先に読み始めた
居心地が悪く視線をはずしていたものの、一瞬近藤の顔を見ると無表情でアンケート結果を見つめていた

全て読み終わり、近藤がこちらにアンケートの束を手渡した
にやっと笑って「よかったじゃん」と言われた


36:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 16:37:07.57 ID:zBgFotU40
読み始めると、案の定声に関する内容で埋まっていた
「あなたの声は日本の宝です」「声優になってください!絶対応援します」

他校の新入部員の一年生達はこの声を聞くのが初めてだったからなのか
いつもよりも大げさな内容だった

近藤のことを考え指が震えながら用紙を次々とめくり、全てに目を通していった
束は残り数枚となり、最後のアンケートをめくると、今でも忘れられない感想があった

「いい加減声作るのやめろ」

回答者の名前も所属校もなく、辛辣な字でそれだけ書いてあった

顔を上げると、にやっと笑った近藤と目が合った
胸が押さえつけられるような苦しさを覚えた


37:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 16:50:01.89 ID:zBgFotU40
感想を読んだだけでその日の部活はお開きになった

独りで帰りながら、中学時代のことを思い出した

中学生だった頃、周りは声優志望だらけだった
「声優になって○○さんに会いたい、ハグしてもらいたい!」「絶対声優学校に行く!」と
周りは目を輝かせて語っていた

もちろん、他人からの目線は冷たかった
自分も、将来の夢の欄に恥ずかしげも無く「声優」と書くバカが大嫌いだった

あいつらとは違う、世間知らずの痛くてキモいオタクじゃないとずっと自尊心を保ち続けていたが
初対面の相手に半笑いで「声優になるのが夢なんでしょ?」と聞かれた

声優を目指している周囲の人間からは「その声なら声優になるのなんて余裕だからいいよね」と睨まれた


38:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 17:02:22.29 ID:zBgFotU40
周りからの認識は「声優になるため日常生活から無理してアニメ声を作っている痛い奴」だと
中3で初めて気付いた

見下してきたバカよりもさらに世間からは見下されているとにわかには信じられなかった


帰り道を歩きながら、何を勘違いしていたのかと思い返した

結局演劇部に入っても周りからは声を作っている痛い人物としか思われていなかったのだ
皆こいつは声を作っていると思ったうえで「可愛い」「声優になって」といい加減なことを言っていたのだ

どうしてどいつもこいつも勘違いさせるようなことを言ったんだよ
少しだけこの声でよかったと思った自分が馬鹿だった
何が大ファンだ、何が日本の宝だと憤った

しかしやはり、今まで築いた物が崩れていったかのような落胆のほうが長く大きかった


39:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 17:10:12.85 ID:zBgFotU40
久しぶりに見た近藤の笑い顔も頭から離れなかった

「いい加減声作るのやめろ」は近藤の気持ちを代弁していたのだろうか、だから近藤はあんな嬉しそうな顔をしたのか
今までは先輩達と毎日遅くまで練習に励んできたのに、先輩がいなくなった後も必死に支えあってきたのに

何もかも終わりだ、もうファンだといってくれる喜びよりも辛いという気持ちの方がずっと大きかった
こんなの辞めてやると心の中で何度も叫んだ

翌日、持病の発作がおき学校を休んだ

体調が回復しても、なかなか学校に行く気持ちにはなれなかった

そんなとき、長田さんからメールが届いた


42:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 17:24:12.39 ID:zBgFotU40
何気ない話題だったが、家に独りでいるのも暇だったのでメールの往復は続いた

話題が一段落したとき、「今週末ご飯にでも行かない?悩みがあったら聞くよ」と言われた
初めて大会以外で会うことになった

その週の土曜日、長田さんの車で行ったことのない遠くのお店へ行った
お店の中では話が弾まず、長田さんの車に戻って本題に移った

話し終わると、長田さんは「私はあなたの声が本当に好きだよ」と言った
声作ってて気持ち悪いって思いませんかと聞くと、それは否定した

泣くのを堪えていると、突然運転席に座っている長田さんに抱きしめられた

え?と普通なら思うところだが、雰囲気に呑まれなんていい人だと感動していた
長田さんが肩に顔を押し付け、髪に鼻を当てて深呼吸しているような気もしたが
そこもまた雰囲気で流した


40:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 17:14:15.75 ID:kXtu7VGd0
今何歳?
読みやすい!


43:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 17:30:32.93 ID:zBgFotU40
>>40
大学一年生です
遅生まれなのでまだ18です



長田さんは家まで送ると言ってくれた
もう少し長田さんと話していたい気分だったので、甘えさせてもらった

某大型ショッピングモールまで乗せて行ってほしいと頼んだ
お世話になっているとはいえ、他人に家を教えるのには抵抗があり
昔から念のために嘘の場所を言う癖があった

ショッピングモールの駐車場に着いたとき、これ以上は本当にいいのかと言われたが
もうすぐそこですからと家とは別の方角を指差した

それを聞くと長田さんはニコニコしながらシートの影からワインレッドのオシャレな紙袋を取り出した
あなたが落ち込んでるみたいだからクッキー焼いたの、帰ってからあけてねと言われた
有難くて何度もお礼を言ってから、20分かけて家まで歩いて帰った


44:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 17:37:22.48 ID:zBgFotU40
帰りの道のり、紙袋を眺めては笑顔になった
通学で通る道に出たとき暗い影もよぎったが、このプレゼントに守られるような気がした

家について自分の部屋へ一直線に走り、胸を弾ませながら紙袋を開けた
中にはナッツの入ったクッキーが透明な可愛い柄の袋に包まれていた

一口食べていると、今までに食べたことの無い独特の風味があったが、美味しかった

大切に食べようと一つだけ食べて袋を閉じ、何となく紙袋を覗くと折りたたまれた紙が目に入った

長田さんが手紙を書いてくれた!?と急いで取り出し開いた
中には、似顔絵とメッセージが描いてあった
思わず微妙な表情になった


46:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 17:44:03.72 ID:zBgFotU40
紙いっぱいに描かれた大きな似顔絵は、独特のオーラを放っていた

例えるならばちょっと絵が上手い小学生の女の子という感じ
頭でっかちで目が縦長くキラキラ、片目はウインクしている

手は片方は腰に、もう片方はウエイトレスかキャビンアテンダントのようなポーズを取っていた
自分は髪が胸くらいまでしかないが、その絵の中ではひざまであった
色鉛筆で色が塗られ、ピンク色のシンプルなワンピースを着ていた

小学生が描いたというならほほえましいが、二十代後半の長田さんが大真面目に描いたと思うと疑問が残る
妹さんか娘さんが書いたのかと想像したが、かなり幼い妹や娘がいるとは聞いていない
下に書いてある「応援してるよ!ファイト!」というメッセージは明らかに長田さんのものだった

長田さんが描いたにしても、どうしてこんな絵を…
少し背筋に寒さを覚えた


47:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 17:45:32.54 ID:+Vlf/5Qb0
手作りクッキーこええ!


48:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 17:53:22.09 ID:DX22q2Rc0
寒くなった


49:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 17:54:23.08 ID:zBgFotU40
一抹の不安は覚えたものの、長田さんとは前と比べ物にならないほど頻繁に会うようになった

一回一回の話は省くが、食事や買い物を重ねるごとに距離は縮まり
長田さんを姉のように思い慕っていた

おしゃれな服装で、大人の店をたくさん知っていて、周りにはない都会的な雰囲気に惹かれていた

その間近藤とははっきりとしない関係だった
あの辛辣なアンケートの事件の後、気が重いながらも学校へ向かうと
近藤のほうから「なにがあったの?体は大丈夫?」と話しかけてきた

こちらがご機嫌取りに言う冗談にも、前よりもずっと笑ってくれるようになった

あのアンケートを見たときはざまぁ見ろという表情でにやついていたのに
何故か突然昔の仲が良かった近藤に戻ったようだった

部活をやめたいと強く思った気持ちも、少し揺らいでいた
このとき高校2年生の初夏だった


50:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 18:02:41.24 ID:zBgFotU40
長田さんは、よくプレゼントをくれた
食事に行ったときも、必ずご馳走してくれた

申し訳なくてプレゼントを断ったことも、食事代の端数だけでも出そうとしたこともあったが
長田さんはやめてと言った

長田さんはいつも高そうなブランド品を身に着けていて、車には詳しくないが二十代の女性なのに
軽じゃない広くてキレイな自分専用らしい車に乗っていたので、お金には余裕がありそうだった
長田さんに任せることで相手の顔を立てることになるんだろうと自分を納得させていた

それでもやはり、なにがほしいかと聞かれれば安物を選んだ
服を選んでもらうときも、どちらが好みかと聞かれれば安いほうを答えた

学校では明るい気持ちになれず友人と少し距離を置くようになり
休日や、時には平日の長田さんとの食事や買い物が生活の中心になりつつあった

そしてあるとき、いつもとは毛色の違うプレゼントを渡される


51:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 18:12:13.45 ID:zBgFotU40
その日の帰り、また長田さんはニコニコしながらプレゼントを取り出した

いつもは「家で帰ってから開けて」と言われるのだが、そのときは貰ってすぐ「開けてみて」と言われた
なにかな~?と言いながら開けてみると、下着だった

「1ちゃん合うサイズのブラがなかなか見つからないって言うから」と隣で長田さんが言った
驚いたのは、プレゼントが下着だからだけではなかった

とんでもなく挑発的な色だった
黒にピンク色の派手なレースが付いていた
心なしか布面積も節約志向だった

面食らっていると「こういうの好みじゃなかった?」と聞いてきた
返事に困ったが、「こういう下着は初めてなので、驚いただけです」と言った


52:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 18:17:43.74 ID:9gd/VlktP
長田さんの容姿が気になる


54:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 18:29:20.43 ID:zBgFotU40
>>52
芸能人では例えづらいですが、顔は彫りが深く、全体的に肉が少ないです
すらっと背が高いので、ブランド物の服がディスプレイ用のマネキンに着せたみたいに似合ってました

髪はダークブラウンで腰ほどまで長く、よく装飾の豪華なバレッタをとめていました


53:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 18:23:13.36 ID:zBgFotU40
似顔絵のプレゼントも相変わらずあった
毎回毎回全く同じ絵柄で、空にはおひさまが昇り周りには赤や青のチューリップが咲いていた
この絵だけは、大人っぽい長田さんの真逆の面だった

絵のことを聞いてみようかとも思ったが、長田さんが絵に関しては全く触れないので
こちらからも聞くのはやめた

長田さんは、買い物の最中よく身体を密着させてきた
服を選ぶときに胸を触ることもあたが、女同士だしこちらが気にしすぎなんだろうと思っていた

なんだかんだで出場した次の大会で、長田さんは控え室にまで尋ねてきた
ノックの音がして長田さんが入ってきたとき、近藤の顔が見れなかったが
長田さんは近藤にも親しく話しかけ、手を握って頑張ってね!と言った

近藤も嬉しそうだった
差し入れは手作りのクッキーだった


55:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 18:36:15.14 ID:ZxsLXh/u0
手作りクッキー何入ってたんだろう…gkbr


56:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 18:39:18.78 ID:zBgFotU40
後日長田さんに会ったとき、近藤の話になった

「きっと根はいい子だから、また仲良しに戻れるよ」という長田さんの言葉に何度もうなずいた

演劇を通して長田さんに出会えたし、近藤ともこれから少しずつもとの関係に戻れそうな気がする
久しぶりに別の友人とも遊びにいけて、今とても幸せだと話すと、長田さんの表情が険しくなった

「そのお友達はどんな子?何をしに行ったの?」

おかしいと思いなぜそんなことを聞くのか訪ねると

「いいから答えて」
と眉一つ動かさず言われた

相変わらず個人情報の大事なところには嘘を交えながら話すと
ならいいのとだけ言ってもとの長田さんに戻った


57:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 18:44:21.46 ID:zBgFotU40
突然、長田さんとの関係が終わる日がやってきた

もう何度目か分からないくらい長田さんに会い、楽しい時間をすごしていた
子供のような似顔絵や突然機嫌が悪くなることなど、おかしな長田さんを忘れるくらい
その日も何気ない話に熱中した

車に戻り、そろそろ帰りましょうかと話しているとき、長田さんはまたニコニコしてプレゼントを取り出した
前と同じように「ここで開けて」と言った

一瞬身構えたが、長田さんが「家に帰ってから開けて」というときには大抵あの絵が入っているので
あれがないのならいいかと開けた

いつもとは雰囲気の違う入れ物だったので、一度長田さんのほうを見ると
いいから早く開けて、ほらほらとせかされた


59:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 18:57:12.40 ID:zBgFotU40
開けてみて言葉を失った
リアクションの取りようがなかった

振動するタイプのとっても卑猥なマシーンが入っていた

冗談でやってるんだよな…?と一縷の望みをかけて長田さんの顔を見た
アンケートのときの近藤と同じような笑みを浮かべていた

一瞬肝が冷えたが、この笑顔は冗談だと判断し、もう、なんですかこれと笑って見せた
するとニコニコしていた長田さんの顔は急に険しくなり、真面目なトーンの声で

「本気だから」と言った

心の中を見透かされてるようだった


87:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 21:59:31.16 ID:CTC2DfN30
>>59
本気だからwwwwwwwww


60:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 18:59:50.51 ID:0bGMABP0O
何コイツキモいね(;´д`)
こんな奴が性犯罪起こすんだろうな…。


62:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 19:04:28.57 ID:zBgFotU40
長田さんに好きだといわれた
何よりその声がいいと言われた
その声でいろんな言葉を聞きたいといわれた
あなたが声をコンプレックスに思ってショックを受けているのが面白いと言われた

あなたと本気で関係を持ちたいと思っている
私達もう姉妹みたいなもんだし、両思いだもんねと真剣な目で長田さんは言っていた

しばらく言葉を失っていたが、長田さんにあなたどうなのと聞かれ我に返った
頭の中でいろいろな考えが廻ったが、「突然すぎてよくわかりません」と搾り出すので精一杯だった

それに返事はせず長田さんは車を走らせた
自分で帰りますと言ったが、走り始めたばかりの車は止まらなかった

長田さんはハンドルを握っていない左手でこちらの腕をずっと掴んでいた


70:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 21:13:20.98 ID:zBgFotU40
よく知らない土地だったが、来るときと通る道が違っているのは感じていた

途中どこに行くんですかと聞いたが、長田さんは正面を見たままブツブツと何か苛立ったように言った後
何度か「アー!!」と突然叫んだ

それ以上は何も聞かないようにした

見たこともないような裏道を通って、田んぼがチラホラ見えてきた
まっすぐ道なりに進んでいたのに、突然横道にそれたと思うと、大きな建物に入っていった

どうみてもいかがわしい城だった
やはりタダで返してくれるわけではなかった、長田さんはホテル A GOGOしていたのだ

車一台が止まれるガレージの入り口がいくつか空いており、その中の一つに車は止まって
長田さんは「降りて」といった

従って素直に降りるや否や、ダッシュで逃げた
いかがわしいプレゼントは車内に置いていった


71:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 21:14:56.51 ID:BlpNvh2F0
逃げ切れるか…?


72:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 21:17:15.25 ID:7IrGoA0X0
これはやばいな


66:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 20:25:07.94 ID:BlpNvh2F0
>>1の胸のサイズなどスペックもよろ


67:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 21:04:08.15 ID:zBgFotU40
>>66
現在大学一年生 文系
18歳 身長160 
胸のサイズは普通の下着ショップではなかなか合うやつが無いってところから推測してください


68:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 21:08:31.86 ID:BlpNvh2F0
>>67
なるほどAAカップかな?


73:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 21:21:41.37 ID:zBgFotU40
>>68
そっちちゃうわ…


見知らぬ土地に当ても無く飛び出してしまった
長田さんは追いかけてくるかと思ったが、「アアアー!!」と何か大声で叫んだ後何の音もしなかった

小6のときリレーでアンカーを務めたこの脚を信じて近くの民家の路地へとひたすら走った
畑の中に古い民家がいくつか密着して建っており、その隙間に入り込んで震える手でスマホを取り出した

マップからするとここは県内でも家とは逆方向の場所だ
近くに駅はない、ただこの地域にバス停はあるらしい

情報化社会に心底感謝した

途中家々の隙間から長田さんと同じ白の車が前の道路を通り過ぎるのが見えたが
乗っているのは別人であることを祈った


75:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 21:26:46.43 ID:zBgFotU40
バスの到着まで、40分ほど民家の隙間に挟まり続けた
途中状況を冷静に見て泣きそうになった

長田さんは完全にシャレにならないモードのスイッチが入っていた
捕まったら殺される、刺される…

民家の隙間から脱出するとき押しつぶされそうな不安を覚え
車道沿いの道を歩くときには車が通るたび心臓が止まりそうになった

少し早めに見たこともないバス停に到着し、物陰に隠れてバスを待った
部活か何かで中学生が一人バス停にいたが、その視線を気にしている余裕も無かった

バスが到着するや否や、物陰から飛び出して中学生より先にバスに乗った
窓から見える姿でバレないよう、髪型を高い位置で結んだポニーテールに変更し、ずっと通路側を向いていた


77:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 21:33:49.46 ID:zBgFotU40
バスの運転席の後ろの板に張ってある路線図に目を凝らした
見えたとおりで正しければ、最後のほうで聞いたことも無い駅に留まるらしい

途中長田さんが乗ってきたらどうしようという妄想に取り付かれて吐きそうになったり
後ろの席に座ってる人、もしかしたら長田さんじゃ…とものすごく不安になったりした

しかしバスは無事に駅に到着し、かなり長時間乗っていたのにこのバスはどこまで乗っても100円でOK
良心的な価格に感謝しながら名残惜しくもバスを降りた

駅に入ると、いっそう不安が増した
もしかしたら長田さんは帰るすべが無いので電車を使うだろうと先を読んでいるかもしれない
ここで捕まったらどうしよう、チラホラ人はいるが助けてくれるだろうか…

そんな矢先電車が到着した
マップによるとこれに乗って数駅後に乗換えが必要だが、あと1時間もかからず帰れるらしい
この1時間を無事に乗り切れるか不安で仕方が無かった


78:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 21:39:53.75 ID:zBgFotU40
電車は無事に走り出し、周りの乗客を見渡しても長田さんはいない

乗り換え情報を見るためスマホのロックを解除すると新着のメッセージが届いていた
絶対にメーラーは起動しなかった
ここで届くメールの差出人なんてたいていあの人だ

無事に乗り換えも済み、見たことのある車窓からの景色に安心感を覚えた
家は駅からわりと近いので、おそらく大丈夫だろう
長田さんには家はかなり離れたショッピングモールのあたりだと嘘を教えてある

スマホを操作していると、また新着メッセージの報告が出た
気にしたら負けだ、見るとしても家に着いてからだ、ここで見たらメンタルが大変なことになる
そう心を落ち着かせようとしても、やはりメールが頻繁に何通も届いているとすると
長田さんからの罵詈雑言しか思い浮かばなかった


80:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 21:46:24.58 ID:zBgFotU40
数十分後、無事家に着いた
真っ先に家のありとあらゆる鍵を閉めた

自室のベッドにもぐりこみ、生還できた実感に震えた
思えば長田さんからの初めてのプレゼントのクッキーを開けたのも
あのおかしな似顔絵を見たのも、その後のあらゆるプレゼントの開封をしたのもこのベッドの上だった

布団の中で呼吸を整え、メーラーを起動した
帰ってくる間にまた何通もメールが届き、見ておかなければならないという謎の使命感を感じた

メール読み込みにはかなり時間がかかった
やっと受信箱が更新されると、やはり全て「長田さん」で埋まっていた

余計な思考をしないよう、すぐさま最新のメールを読んだ

「死ね」だけだった


81:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 21:49:45.64 ID:XxvDfyKU0
こわいんですけど


82: 忍法帖【Lv=4,xxxP】(1+0:8) :2012/11/29(木) 21:50:07.67 ID:7IrGoA0X0
メンヘラキターー


83:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 21:52:15.03 ID:zBgFotU40
「どこにいるんだよ」「出て来い糞ガキ」「宇宙人」

どれも短文だったがスクロールしないと表示しきれないほどの
改行も何もない文字ばかりの長文メールが一通だけあった

汚い言葉、下品な言葉を見ないようにしながら延々続く長文を下にスクロールしていくと
ある行を境に全てチューリップの絵文字で埋まっていた

ここでメーラーを閉じた
目の前がグニャグニャした緑色になり息が出来なくなった

母が晩ご飯が出来たと呼ぶ声で目が覚めた
いつの間にか眠っていたらしい
スマホのロックを解除すると、また新着メールが届いたと表示されていた
送信者が全て長田さんなのを確認してから電源を切った


85:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 21:55:47.04 ID:xykEqIWp0
これどんなサスペンスだよ怖いよ




ってビビッてるのに「志村うしろうしろ!」とか思っちゃった俺もいる


86:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 21:57:12.50 ID:zBgFotU40
台所に入ると、母が服がしわだらけだと叫んだ
出かけたときの服装のまま寝てしまったため、スカートが折れてしわになっていた

この服は長田さんに買ってもらった
どちらがいいかと言われて選んだ安いほうの服だった

今朝出かけるときもおしゃれな長田さんに会うからと時間をかけて選んだことを思い出した
急いでパジャマに着替えた

翌日は日曜日だった
朝起きたときに新着メールが届いており、友人からの1通以外は全て長田さんからだった

その日の夕方まで、長田さんからのメールは途絶えていた
日も暮れてきて部屋に明かりをつけた頃、一通だけメールが届いた
送信者は長田さんだった


88:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 22:01:28.23 ID:zBgFotU40
「落ち着いて話がしたいです。どうかメールをください」

一度は無視をした
しかし長田さんから追撃メールが届くことは無かった

その日の夜、「昨日はすみませんでした」とだけ書いて返信した

いつもならすぐに届く返信がなかなか届かなかった

十二時が過ぎても、眠れずに起きていた
明日の学校なんて関係なかった
長田さんからの返信を待たなければならないような気がした

1時に差し掛かった頃、長田さんからメールが届いた


89:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 22:03:19.44 ID:YIzy+2KQ0
部屋の明かりをつけた頃
長田さんのメールを見た
みーつけた

って想像して怖くなった


90:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 22:05:29.00 ID:CTC2DfN30
こわすぎgkbr


91:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 22:08:26.02 ID:zBgFotU40
文面に目が釘付けになり、離そうと思っても自分の意思では離れなかった

「○○高校 ○○駅
 お前の住所は分かってる、殺す
 逃げたら家族も殺す
 メアド変えたら殺すぞ
 私と会え、セッ○スしろ」

支離滅裂だったがこんなことが書いていた
そうだった、出会ったのが演劇の大会だから、とっくに高校名は割れているのだ

その次に書いてある駅名で背筋が凍った
長田さんに教えていた嘘の住所はショッピングモールのすぐ近く
そっち方面には別の駅があるのだが、メールに書かれている駅名は実際の家の最寄り駅だった

何でバレた
部屋の明かりを消して、返信をしないまま布団に潜り目を閉じた
なかなか眠れなかった


92:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 22:12:59.22 ID:XxvDfyKU0
あのーこわいんですけど


93:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 22:22:22.11 ID:zBgFotU40
翌日から学校が始まった

メールは時々届いた
罵詈雑言で支離滅裂な文章か、「今なにしてる?」といったいつもの長田さんの文章だった

新着メールを見るのが怖くて仕方が無かった
長田さんと離れアドレスを変えた今でも、新着メールをチェックするときは呼吸が荒くなり汗をかく

学校への往復が何より怖かった
長田さんが家の場所を知っているというのが本当なら、確実に見張られている
少し遠回りをして細くて入り組んだ道を選んだ
友人と時間があうときには、出来る限り一緒に帰るようにした

もう部活は辞めた
近藤とアンケートのあの件のときは辞めようと思った後もしばらく粘ったのに
大会で長田さんに会うと思うと手は自然と退部届けに伸びた
近藤との関係修復の可能性を捨て、身の安全を選んだ


96:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 22:32:23.18 ID:wpSXVADY0
>>93の書き込み時間が!
「フフフフフフ…いい?」


94: 忍法帖【Lv=4,xxxP】(1+0:8) :2012/11/29(木) 22:30:01.31 ID:7IrGoA0X0
なにこれこわい


95:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 22:30:19.87 ID:gJ3CHyUVi
こええええ


98:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 22:34:48.95 ID:zBgFotU40
3年生になった

一度だけ、家の近くの広場で近藤さんの車を見た

白い車は他にいくらでもあるが、その車は近藤さんの車と同じくミラーからぬいぐるみがぶらさがっていた

見た瞬間肝が冷えて自転車から転びそうになったが、何事も無かったような顔をしていた
髪形を変えマスクをし、いつもなら曲がる道を直進していったのできっとばれていないと自分に言い聞かせた

進路を選ぶ時期になると、できるだけ遠くの大学を選んだ
地元に進学・就職する友人達からはなかなか会えなくなるねと寂しがられたが
地元を離れ早く安心したかった

長田さんからのメールの頻度は減った
罵詈雑言よりも、おかしな日記のような内容が届くことの方が多かった


101:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 22:36:22.65 ID:YIzy+2KQ0
今もメールくるの?


103:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 22:41:47.84 ID:zBgFotU40
>>101
今はメアドを変更したので来ません


102:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 22:40:08.89 ID:zBgFotU40
登下校の度に感じていた不安も霧消し
長田さんもこのまま諦めてくれるのかもしれないと思い始めた頃
長田さんから久しぶりにメールが届いた

「あなたのためにたくさんお金を使いました
 お金を返せば許します。本当です。全て忘れます。
 返さないと警察に訴えて死刑にしてもらいます。
 あなたのやっていることは日本法に違法です。重罪です。
 金返せ。会え。身体で返せ」

所々おかしな文章もあったが、要するに会えということだった
返信するか無視するか迷い、とりあえずしばらく待って追撃のメールが届くか試していると
数時間後もう一通届いた


104:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 22:46:18.88 ID:zBgFotU40
次の文章は比較的しっかりしていた
一年前普通にメールしていた頃の長田さんだった

もう一度だけあなたに会いたい
会ったら本当に終わりにする
あなたが私のことを好きじゃないのはわかってる、だから一度会ってくれれば全て諦める
もうこんなこと言っても何も説得力はないかもしれないけど、私を信じてください


「会って何をするつもりなんですか」と返信した

最後に一度だけ、私にいい思い出を作らせてください
愛を確かめさせてください

考えた末、「分かりました」と返信した


105:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 22:50:39.82 ID:zBgFotU40
早く安心したいという気持ちが何より大きかった

一度だけ会えば、もうこれ以上脅迫メールもない
通学路を見張られることも無い

最後の最後に、長田さんを信じたかった

いつ会うかをメールで決めた
今まではまともなメールの状態が長く続くことはなく、大体突然罵詈雑言に変わったりしたが
このときは最後まで昔の長田さんだった

今週末も空いていたが、会う日は翌週にした
この間少しでもおかしなメールが来れば、長田さんに会うのは辞めようと決めていた

何の罵り言葉も届かないまま、前日になった


106:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 22:51:42.41 ID:B4EquH2e0
こわいけどかなしいような


109:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 22:59:36.40 ID:w09Eb/1G0
先が気になる


110:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 23:08:27.81 ID:zBgFotU40
会うのを辞めてしまおうかとも何度か考えた

しかしここで辞めれば、長田さんは逆上するだろう
家に火をつけるだとか、家族を殺すだとか、メールで言っていた脅し文句を
本当に実行するかもしれない

二週間たっても気持ちが落ち着いた状態のままらしい今の長田さんの提案に乗れば
最悪の事態だけは避けられるだろうと思った

翌日、家から離れた利用者数の多い大きな駅で待ち合わせをした
長田さんから貰った服は去年から着ていなかった
自分でためたお金で買った新しい服で駅に向かった


111:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 23:17:39.64 ID:zBgFotU40
賑やかな往来の中で長田さんと久しぶりに再会した
一年前と同じく流行の服をモデルのように着こなしていた

会うと申し訳そうな顔をしながらも満面の笑みを浮かべていた

しばらく何かあってもすぐに助けが呼べる状況で長田さんの様子を伺うように
何気ない話をしたが、おかしな発言や感情が不安定な面などはみられなかった

駅のすぐ横のカフェでご飯を食べた
前のようにとはいかなかったが、ぎこちないながらも会話は進んだ

メールのことについては意識して触れられずにいたが、食事が終わりかけた頃
長田さんからメールについて話し始めた


112:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 23:23:32.57 ID:zBgFotU40
家を知っているとメールで書いたが、本当は知らない
最寄り駅は昔メアド交換をしていた近藤に教えてもらった
駅でいれば会えると思って見張っていたことが何度かあった
メールで脅かしてしまて申し訳ない

演技や舞台のアドバイスをしてくれたときの長田さんと同じ口調で、仕草で
メールのことについて話してくれた

そのことに関してはもういいので、今ここでお互い電話帳から相手のデータを消しましょうと提案した
メールアドレスを変更する許可を下さいと言った

長田さんも賛成して、その場でアドレスを消去した
もう次に長田さんに会うことはないと感じた

食事を終え、長田さんとホテルへ向かった


113:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 23:25:14.96 ID:LkvilH/60
>>112
暴走しなかったのか…
よかったよかった


・・・ん?


117:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 23:34:51.08 ID:dA+c6deJ0
>>112
え、あの、最後の一行ってまさか…


121:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 23:37:47.72 ID:zBgFotU40
>>117

長田さんの意向で向かいました
断れる立場でもなかったので

生々しいのは皆さん嫌だと思うんで省略しました


122:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 23:38:32.06 ID:BlpNvh2F0
>>121
そこは一番聞きたいところではないのか?ww


123:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 23:38:54.91 ID:w09Eb/1G0
>>121
ちょっと気になる・・・


115:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 23:31:54.24 ID:zBgFotU40
帰ってからメアドを変更した
最低限の友人にだけ、メアド変更のメールを送った
近藤には送らなかった

それから長田さんに会うことは全くなかった
大学に合格し、全く知らない土地へ引っ越しています

尻すぼみですみません
はっきりとしたオチはありませんが、これで終わりです


119:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 23:35:43.66 ID:xykEqIWp0
え?


120:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 23:37:28.16 ID:BOH6cEw/0
やっぱ幽霊よりメンヘラの方が恐いな。身体がなんか寒くなってきたぜチキショー


124:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 23:39:10.66 ID:YIzy+2KQ0
一番ききたい
ホテルでのこと


130:名も無き被検体774号+:2012/11/29(木) 23:46:43.51 ID:zBgFotU40
乳といいホテルと言い皆さんお好きですね

とりあえず今日は読んでくださってありがとうございました
ではおやすみなさい


134:名も無き被検体774号+:2012/11/30(金) 00:13:23.95 ID:WpGB7nPH0
追いついた!

普通の下着屋さんだとあってもDまでなんだよねー(´・ω・`)

メール怖すぎわろえない……


136:名も無き被検体774号+:2012/11/30(金) 00:26:54.15 ID:ehVRS6px0
ホテル行ったとかワロタ


137:名も無き被検体774号+:2012/11/30(金) 00:37:26.93 ID:DCajVSca0
ROMってたけど、すごい話だな
声フェチな俺は声にものすごく興味がある。
きっといい声なんだろう。俺はカサカサのハスキーボイスで自分の声が嫌いなんだ


145:名も無き被検体774号+:2012/12/01(土) 01:49:24.72 ID:8wDj0rV20
密室で二人っきり。
刺されるかもって、考えなかった?


150:名も無き被検体774号+:2012/12/01(土) 15:57:53.73 ID:UigYvi9DP
>>145
バイブは刺されたんじゃね


177:名も無き被検体774号+:2012/12/14(金) 23:45:26.90 ID:ioZMM0qi0
ストーカーって異性だけじゃないんだなあ



元スレ:http://hayabusa3.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1354108819/
ストーカーに追い回された二年間の話

1001:114514 ID:
  • 【画像】この1年間で出会い系でハメ撮りした画像を晒す【援交】
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    2012/12/18 21:01 | 【なんでも】VIP【雑談】COMMENT(0)TRACKBACK(0)  TOP

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